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こんにちは。
ハロウィーンが終わったとたんに、街は早くもクリスマス商戦といった様相です。
こんなあわただしい街の様子こそが、我々市井の人々の余裕のなさの象徴のようにも感じる今日この頃です。
さて今月は、太平洋戦争が勃発した昭和16年に作詞された「里の秋」という曲について考えてみたいと思います。
①
しずかなしずかな 里の秋
お背戸に木の実の 落ちる夜は
ああ かあさんと ただ二人
栗の実にてます いろりばた
②
あかるいあかるい 星の空
なきなき夜鴨の 渡る夜は
ああ とうさんの あの笑顔
栗の実たべては おもいだす
七五調の歌詞で構成されています。
母子二人で静かに過ごす夜の風景ですね。もちろんテレビもラジオもありません。
明かりもほんのり灯っているだけでしょう。聞こえてくるのは栗の煮える音と鴨の鳴き声。
嫌でも五感が研ぎ澄まされそうな静かな夜です。
こんなに静かで穏やかな日常の裏で、不在の父は戦争に動員されています。
父の過ごす夜は、この母子とは真逆ですが、ここでは出てきません。
代わりに3番の歌詞で、こんな風にお父さんが登場します。
③
きれいなきれいな 椰子の島
しっかり守って くださいと
ああ とうさんの ご武運を
今夜もひとりで 祈ります
さて、戦時中に作詞されたこの詩の3番を、
昭和20年の終戦直後に以下のように書きかえてメロディーがつけられ、
ラジオ放送されることでこの曲は大ヒットしました。
③
さよならさよなら 椰子の島
お船に揺られて 帰られる
ああとうさんよ 御無事でと
今夜もかあさんと 祈ります
戦時中は、郷里への情をかきたてて戦意を削ぐ可能性の高かった歌詞ですが、
戦後は歌詞の一部を変更することによって、傷ついた人々をいやす曲へと劇的に変化しました。
メロディも穏やかで素朴で、歌詞の世界観を見事に表現しています。
個人的にはこの曲、今ごろの季節になると必ず思い出して歌い続けている大切な曲です。
クリスマスの華やいだ雰囲気に移行するほんのわずかな、
この趣深い晩秋の雰囲気が私は大好きなのですが、ぴったりだと思いませんか?