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2024.07.02
7月のうた「椰子の実」
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こんにちは。
年々暑さが厳しくなっていく昨今、とうとう今年も本格的な夏到来のようです。
さて、今日は私が一番大好きな「椰子の実」という唱歌をご紹介します。
①
名も知らぬ 遠き島より
流れ寄る 椰子の実 ひとつ
ふるさとの岸を 離れて
汝(なれ)はそも 波に幾月(いくつき)
②
もとの木は 生いや茂れる
枝はなお 影をやなせる
われもまた なぎさを枕
ひとり身の 浮き寝の旅ぞ
③
実をとりて 胸にあつれば
あらたなり 流離(りゅうり)の憂い
海の日の 沈むを見れば
たぎり落つ 異郷の涙
思いやる 八重の汐々(しおじお)
いずれの日にか 国に帰らん
少し歌詞が難しく感じられるのは、もともとは唱歌としてつくられたものではなかったからです。
詩人の島崎藤村が作った詩に、あとから曲がつけられて広く歌われるようになりました。
どこか遠くの島から長い旅を通して流れ着いた一つの椰子の実。
主人公は、たよりなく漂う椰子の実に心を寄せます。
さらに、もといた木が今でも生い茂って枝は影をつくっているだろうか、と
椰子の実の故郷にまで思いを寄せます。
そして、遠くから長い旅の果てに自分の手元にやってきた椰子の実に、
自分の姿を重ねるのですから、詩人の感性って繊細で豊かですよね。
しかも・・・、ここまでのすべてが、友人である柳田國男から聞いた
『伊良湖岬で椰子の実を見つけた』
というエピソードからの創作だというのですから、島崎藤村の感性に脱帽です。
また、3番の後に続くコーダ部分が良い!
いつか自分が帰る故郷を思って歌が終わります。
海岸で拾った、たった一つの椰子の実。
そこから始まる壮大な物語に、私は心を奪われてしまいました。
心の中で静かに沸き起こる複雑な思いを、穏やかでゆったりとした曲が優しく包み込む名曲です。
ぜひ聴いてみてください。